常連のお客さんに「よかったらGoogleに口コミを書いてもらえませんか」とお願いしたい。でも、頼み方を間違えると規約違反になるらしい——そう聞いて、声をかけられずにいる。口コミ依頼の例文を探すのは、たいていそんなときです。
その不安は、半分だけ当たっています。Googleのポリシーは、実体験に基づく口コミの依頼そのものを明文で許可しています。外してはいけない線は「見返りを付けない」「内容や星の数を指定しない」「店内で書くよう要求・強要しない」の3つだけ。文面は、Googleが公認する4つの共有先(領収書・感謝メール・チャット・店内QR掲示)に合わせて作れます。
ただし、先に知っておきたい落とし穴が1つあります。法律では問題にならない頼み方でも、Googleの規約では禁止されている領域が実在することです。「消費者庁のQ&Aで大丈夫とされていたから」は、Googleの線の内側にいる保証にはなりません。
口コミのお願いはルール違反なのか — Googleは「依頼してよい」と明文で書いている
「口コミをお願いすること自体が、そもそも違反なのではないか」。この心配への答えは、Googleマップのユーザー投稿コンテンツポリシー(英語版)にあります。店舗に許可されている行為として、次の一文が置かれています。
We do allow merchants to:
- Solicit or encourage the posting of content that does represent a genuine experience, without offering incentives to do so or attempting to influence the rating or the contents of the review.
(出典: Googleマップ ユーザー投稿コンテンツポリシー(英語版)(新しいタブで開きます)、2026年8月12日取得)
訳すと「実体験を反映した投稿を依頼・奨励することは認める。ただし、そのための見返りを提供したり、評価や口コミの内容に影響を与えようとしたりしないこと」。つまり、依頼すること自体は許可されています。「We do allow(私たちは認めている)」という、迷いのない書き方です。
同じポリシーは、店舗に禁止する行為も並べて書いています。
We do not allow merchants to:
- Offer incentives – such as payment, discounts, free goods and/or services - in exchange for posting any review or revision or removal of a negative review.
- Discourage or prohibit negative reviews, or selectively solicit positive reviews from customers
- When soliciting reviews, merchants should not require or pressure users to leave ratings or write reviews while on the premises, nor should they request that specific content be included.
1つめは、支払い・割引・無料の商品やサービスといった見返りと引き換えの依頼の禁止。2つめは、低評価を書かせない・良い評価だけを選んで依頼することの禁止。3つめは、店の敷地内(while on the premises)での要求・強要と、特定の内容の指定の禁止です。内容の指定については、スタッフ名がわかる内容を書かせることが例として挙げられています。
許可と禁止を1枚にすると、次のようになります。
横にスクロールできます
| 依頼のしかた | Googleの判定 | 原文の根拠(要旨) |
|---|---|---|
| 実体験に基づく投稿を依頼・奨励する | 許可 | 見返りの提供や、評価・内容への影響の試みを伴わない依頼は認めると明記 |
| 見返り(支払い・割引・無料提供)と引き換えに依頼する | 禁止 | 口コミの投稿や低評価の修正・削除と引き換えのインセンティブ提供を禁止 |
| 店の敷地内で書くよう要求・強要する | 禁止 | 敷地内で評価や口コミを要求したり圧力をかけたりすることを禁止 |
| 内容やスタッフ名を指定する | 禁止 | 特定の内容を含めるよう求めることを禁止。スタッフ名の指定が例示 |
許可と禁止が同じページに並んでいる以上、考えるべきは「頼んでよいか」ではなく「どう頼むか」です。
Googleが公認する共有先は4つ — 領収書・感謝メール・チャット・店内掲示
どう頼むかについても、Googleは公式ヘルプで具体的な方法を名指ししています。ビジネスプロフィールでは口コミ依頼用のリンクやQRコードを作成でき、その共有先として挙げられているのが次の4つです。
ユーザーがビジネス プロフィールにクチコミを投稿しやすくするために、リンクまたは QR コードを作成して共有し、クチコミをリクエストできます。
- 領収書に含める
- 感謝メールに含める
- チャットでのやりとりの最後に追加する
- QR コードを印刷して店舗に掲示する
(出典: Googleビジネスプロフィール ヘルプ(日本語版)(新しいタブで開きます)、2026年8月12日取得。英語版(新しいタブで開きます)も同じ4つを挙げています)
頼むタイミングは、この4つに沿って自然に決まります。会計のときなら領収書、来店後のお礼の連絡なら感謝メール、問い合わせ対応の締めくくりならチャットの末尾、店頭なら掲示。どれも「お客の手元にリンクが届き、書くかどうかはお客が決める」形になっている点が共通しています。
しかも、この4つはGoogleが自分の名前で挙げている方法です。出どころのわからない裏技を探さなくても、会計・お礼の連絡・問い合わせ対応・店頭と、接客の主要な場面は公認リストの内側だけでひととおり押さえられます。
共有先別・口コミ依頼の例文 — 「なぜ安全か」の根拠つき
公認の4つの共有先に合わせて、文例を挙げます。いずれも実在の店舗の文面ではなく、ポリシーの条件を満たす形で新しく作ったサンプルです。どの文例も、見返り・内容の指定・店内での強要を外すという同じ軸で組んでいます。文面そのものより、この軸のほうが大事です。自店の言葉づかいに直しても、軸が残っていれば線の位置は変わりません。
店内カード・QRコード掲示に添える文例
レジ横のカードや卓上POPは、「QRコードを印刷して店舗に掲示する」に当たります。添える文言は、次のような短さで足ります。
いつもご来店ありがとうございます。よろしければ、Googleマップの口コミでご感想をお聞かせください。こちらのQRコードから投稿ページが開きます。
この文例が線の内側にあるのは、掲示という受動的な提示に留まっているからです。書くかどうか、いつ書くかはお客が決めます。星の数にも内容にも触れず、割引などの見返りも付けていません。逆に「星5でお願いします」「ご投稿でドリンク1杯サービス」といった一言を足した瞬間、内容の指定と見返りの提供に踏み込みます。
感謝メール・LINEメッセージで送る文例
来店後に送るお礼の連絡は、公認リストの「感謝メールに含める」に重なります。メールでも、同じ役割を果たすLINEのメッセージでも、末尾に添える形は共通です。
本日はご来店いただきありがとうございました。もしよろしければ、Googleマップの口コミでご感想をお聞かせください。今後の参考にさせていただきます。
▼ご投稿はこちらから(口コミ投稿ページのリンク)
大事なのは、感想の中身をいっさい指定していないことです。「よかった点を書いてください」「〇〇メニューに触れてください」のように踏み込むと、ポリシーが禁じる特定の内容の指定に近づきます。求めているのは実体験に基づく感想であって、良い評価とは限らない。その前提を文面が保っていることが、この共有先での安全根拠になります。
領収書・チャットの末尾に添える文例
残る2つが「領収書に含める」と「チャットでのやりとりの最後に追加する」です。領収書やレシートなら、余白に印字する一行です。
ご来店ありがとうございました。Googleマップの口コミでご感想をお聞かせください(QRコードから投稿ページが開きます)
問い合わせ対応のチャットなら、締めのあいさつに続けて一文を添えます。
ほかにご不明な点がありましたら、いつでもご連絡ください。もしよろしければ、Googleマップの口コミでご感想もお聞かせいただけるとうれしいです。
どちらも、依頼は一文から二文で十分です。説明を重ね、お願いを繰り返すほど、文面は圧力の色を帯びていきます。
店内での声かけはどこまで許されるか — 「掲示」と「要求」の線
ここまでの2つの原文を並べると、一見矛盾して見える点が残ります。GoogleはQRコードの店内掲示を公認しながら、同じ会社のポリシーで、店内での口コミの要求・強要を禁じているからです。
線の位置は、禁止側の原文に書かれています。
When soliciting reviews, merchants should not require or pressure users to leave ratings or write reviews while on the premises
禁じられているのは、店の敷地内(while on the premises)で評価や口コミを「require(要求)」し「pressure(圧力をかける)」ことです。原文が問題にしているのは、店内という場所そのものではなく、そこでの要求と圧力です。QRコードを置いて案内するだけなら、書くかどうかの決定権はお客の手元に残ります。端末を差し出して「今ここでお願いします」と促した瞬間、決定権は店の側へ移ります。線は「受動的な提示」か「能動的な圧力」かで引かれており、「置いて案内する」までが線の内側です。
お客に端末を差し出し、店内でその場の投稿を促す
QRコードのカードを掲示・手渡しして、持ち帰って書ける形で案内する
会計時に「よろしければ、こちらからご感想をお寄せください」とカードを手渡すのは、持ち帰って書ける形であれば掲示の延長にあります。書き終わるまでその場で見届けるような運用になった時点で、要求の側へ近づきます。
なお、このポリシーの日本語版は「while on the premises」を「その場で」と訳しています。時間の話(すぐに書かせないこと)にも読める訳ですが、原文は場所の話(店の敷地内)です。Google自身が日本語版ヘルプをAI翻訳とし、正確性を保証していないため、判断のよりどころは英語版に置くのが確実です。
割引やプレゼントと引き換えはどこから違反か — 法律とGoogleの二層
最後に残るのが「見返り」の落とし穴です。ここは、法律(景品表示法)とGoogleのポリシーという2つの層で、別々に判定されます。
消費者庁の「ステルスマーケティングに関するQ&A」は、口コミ投稿を条件にサービスを割引価格で提供するケース(Q6)を扱っています。答えは、内容の指示がない場合と、「星5を付けること」を条件にする場合とで分かれています。まず、内容の指示がない場合です。
前段の場合、口コミ投稿の内容についての指示は含まれていません。また、一般消費者の口コミ投稿を促進する目的で、サービスを割引価格で提供するという程度の関係の下であって、割引程度の対価であることも踏まえれば、表示内容の決定に関与しているとはいえません。 したがって、当該口コミ投稿は、通常、「事業者の表示」には当たらず、告示に違反しないと考えられます。
一方、星5を条件にした場合は、判断が反転します。
一方で、後段の場合、口コミ投稿に当たって、「星5(☆☆☆☆☆)」を付けることが条件とされており、事業者は表示(投稿)の内容を決定しているといえるため、「事業者の表示」に当たると考えられます。したがって、「事業者の表示」であることを明瞭にしなければ、告示に違反します。
(出典: 消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」(新しいタブで開きます)、2026年8月12日取得)
星5ではなく「サービスの品質や内容、価格等の取引条件について推奨するコメント」を条件にした場合も同様、とQ&Aは続けています。法律側の線は、割引という見返りの有無ではなく、店が投稿の内容を決めているかどうかにあるわけです。
すると、こう読みたくなります。「内容さえ指定しなければ、割引と引き換えの依頼はやってよいのか」。Googleのポリシーに戻ると、答えは変わります。店舗への禁止の筆頭に挙がっているのが、まさにこの行為だからです。
Offer incentives – such as payment, discounts, free goods and/or services - in exchange for posting any review or revision or removal of a negative review.
支払い・割引・無料の商品やサービスと引き換えに口コミを投稿させることは、内容の指示があってもなくても、Googleでは明文の禁止行為です。法律とGoogleのポリシーは別のレイヤーで判定されており、片方を通っても、もう片方で落ちる構造になっています。「消費者庁のQ&Aで大丈夫とされていた」を根拠に割引と引き換えの依頼を始めると、規約の側で禁止行為に踏み込むことになります。
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| 依頼のやり方 | 消費者庁(景表法告示)の判断 | Googleポリシーの判断 |
|---|---|---|
| 割引と引き換えに依頼(内容の指示なし) | 通常「事業者の表示」に当たらず、告示に違反しないと考えられる | 見返りと引き換えの依頼として禁止 |
| 「星5を付けること」を条件にする | 「事業者の表示」に当たり、明瞭に示さなければ告示違反 | 評価への影響の試みとして禁止 |
| 品質や内容を推奨するコメントを条件にする | 星5を条件にする場合と同様 | 内容の指定として禁止 |
なお消費者庁は、内容を明示的に指示していなくても、対価の内容や過去の取引関係といった関係性から「表示内容の決定に関与している」と判断される場合があるとも述べています(Q4)。「割引なら常に法律上は問題なし」と機械的に読める話ではありません。
口コミの依頼は、後ろめたい行為ではありません。実体験を書いてもらうよう頼むことを、Googleは自分の言葉で認めています。守る線は、見返りを付けない・内容や星の数を指定しない・店内で要求や強要をしない、の3つ。レジ横に置くカードの一枚、閉店後に送るお礼のメッセージの一文からなら、今日の営業の続きで始められます。
